シンガー製のモデル103、職業用の足踏みミシンです。本機は1921年のドイツ製です。ちょうど100年ですね！プロの方から一般の家庭まで多くの洋裁愛好家に使用されたモデルの足踏みミシンになります。

　職業用ミシンが得意とするのはやはり沢山の縫い物を素早く縫うためのスピードを出すことができる点です。家庭用ミシンでスピードを出そうとするとペダルを沢山漕がなくてはいけません。ベルト車の直径が小さいためです。職業用ミシンはベルト車の径が大きいため一踏みでの針の落ちる回数が多いのです。それなりのスピードが出ます。現代の工業用ミシンのクラッチモーターやサーボモーターのような超高速にするのは足では難しいですが、手で生地を制御するには程よく早いスピードになるのが、職業用ミシンだと思います。

　ミシン本体は長年経っておりますので分解掃除をしております。ただ外装は模様が消えておりましたので当店で絵柄を復元いたしました。絵柄の摩耗のためだけに能力が生かされないのは勿体ないです。シンプルな絵柄はプロっぽさを感じさせますね。針は工業用・職業用として売られているミシン針（DBx1など）が使用できます。釜は垂直全回転釜で高速に強く、脚部のベルト車も直径が大きいため、スピードとパワーの両方に対応したミシンとも言えます。機械は分解掃除をして調整いたしました。ミシンの心臓である釜も分解して掃除をしております。ベルト・ボビンケース・ボビンなど消耗品は交換しました。内部のグリースボックスも古いグリースを除去しボックス内のクリーニング、そしてグリースの交換をしております。

　台は折り畳み部分のあるテーブルです。補修をして古い塗装を落とし再塗装をして整備いたしました。補修をしてありますが木の経年の変化により緩やかに波打っている場所もあります。使用した塗料は天然樹脂シェラックニスとやはり摩耗が多いと思われますのでウレタンでコーティングしています。シェラック自体は古くから使用される天然樹脂の塗料で、アンティーク家具の補修や塗装に使われてきました。天然素材で石油系シンナーなども使用しておらず、またホルムアルデヒドの吸着効果もあると言われています。ただ、熱やアルコールに弱いので、熱いコーヒーカップや消毒アルコールなどを置かないようにしてください。また水気のある花瓶も避けた方がよいでしょう。脚も分解してクリーニングをいたしました。

　下の写真の中ごろに写っているライトもお付けいたします。