黒のボディ部分がピカピカのシンガーモデル103の職業用足踏みミシンです。戦前の洋裁の先駆者たちは”ヒャクサン”と呼んでいました。こちらはドイツ製です。同じ103はアメリカ・イギリス・ドイツの工場で生産されたことがありますが、基本的な中身は同じです。当時から日本ではよく好まれた機種だったのですが、その理由のひとつには縫い目幅が5mmまで伸ばすことができ（当時の他機種はせいぜい4mm）て、着物を縫うのにも適していたからだと言われます。縫い目が5mmもあれば解き易いんですね。

　針は工業用・職業用として売られているミシン針（DBx1など）が使用できます。釜は垂直全回転釜で高速に強く、脚部のベルト車も直径が大きいため、スピードとパワーの両方に対応したミシンとも言えます。

　機械は分解掃除をして調整いたしました。ベルトなどの消耗品は交換、内部のグリースも交換しております。工業用ミシン針（DBｘ１など）・ボビンケース・ボビンなど市販されているものが使用できます。返し縫い機能があります。一般的に毎日のように使われることを前提とした職業用・工業用ミシン、機械は金属ですが表面の塗装や絵柄は使用等により磨耗してしまいます。十分な機能が残っていても見た目だけで敬遠されるのはもったいないですよね。そこでこちらはSINGERの文字や絵柄をもオーバーホールしました！OILの文字で注油箇所の指示もしてあります。

　台はこちらに届いたときには職業用ミシンらしく使いこまれたようではがれた箇所などが目立ちましたので、上面全てを張り替えました。塗装には当店独自の天然ステインとニスを使用しました。使用した塗料は天然樹脂シェラックニス。古くから使用される天然樹脂の塗料で、アンティーク家具の補修や塗装に使われてきました。天然素材で石油系シンナーなども使用しておらず、またホルムアルデヒドの吸着効果もあると言われています。ただ、熱やアルコールに弱いので、熱いコーヒーカップや消毒アルコールなどを置かないようにしてください。また水気のある花瓶も避けた方がよいでしょう。脚は分解クリーニング後に再塗装をして機械の調整もしております。

　塗装や絵柄はレストアして、また板も張り替えをして新品のようになっているかと思われそうですが、金属の部分はオリジナルのままを使用しましたので古い雰囲気も残すよう仕上がりました。